筑紫女学園報/2010年(平成22年)6月7日発行 No71
Chikushi Jogakuen Online Report
 
学園報トップに戻る

大学・短期大学部トピックス
高等学校・中学校トピックス
幼稚園トピックス
法海
連載企画
ご意見・ご感想


こころの時代に 7
こころのオンとオフ 大学院人間科学研究科長 板井 修一
忙しさに追われた若い頃の勘違い
 大学時代の友人から、定年退職したことを知らせる葉書が届いた。「これからは、庭仕事に精を出す」とあり、「秋には家内との海外旅行に出かける」と、新しい生活を楽しみにしている文面である。肩の荷を下ろして、ゆっくりとした生活をスタートできる友人を、少し羨ましく感じた。
 若い頃の私は、毎日忙しく駆けずり回っていると、いかにも充実しているかのように勘違いしていた。余計なことには目もくれず、仕事に追い回されているとき、「きついつらい」とぼやきながらも、どこか悦に入っているところもあった。自分が仕事を動かしているという気負いもあり、緊張の糸を緩めたら、取り残されてしまうという不安がつきまとっていた。
生きるスピードを見つめ直して
 40代の中頃、とうとう身体が悲鳴をあげた。病院受診が多くなり、入院することもあった。このままだと、本当にダウンしてしまうと恐怖を感じることもたびたび起きた。
 その後、それまでは誘われても即座に拒否していた山歩きや旅行に、何か自分には似合わないなと感じながらも、思い切って出かけるようにした。スピードを出してまっすぐに突き進んでいた自動車が、ブレーキをかけながらハンドルを切り、いままでとは違う景色の見える道に入ったようなものである。仕事中心の生き方から、遊びを愉しみながらのライフスタイルに切り替えられたのかなと思っている。
 気がかりなことが頭に引っかかっていても、遊びに没頭していると、いつの間にか忘れていたり、「何とかなるさ」と気持ちが楽になっていたりする。今の私にとっての遊びは、草むしりや大工仕事であったり、そうした作業の合間の家内とのつまらないおしゃべりにしか過ぎないのだが、何事にも代え難い時間となっている。
 退職した友人のように、毎日が日曜日とはいかないが、こころのオンとオフをしっかりと切り替えながら、もうしばらくは現役生活を続けたいと思っている。


▲PAGE TOPへ



Copyright 2002 Chikushi Jogakuen