No.2
2021.04.01

大学で受けた温かい叱咤激励で、
難しかった国家試験に合格。
達成感を糧に、また次の挑戦へ

Profile 藤田 智絵 さん
NPO法人issue+design
筑紫女学園大学 文学部 人間福祉学科|2011年卒業
01筑女に入学したきっかけを教えてください。
高校生の頃に、盲導犬のボランティア活動に関わったことをきっかけに福祉に興味を持ち、人間福祉学科を目指しました。受験で初めて訪れたキャンパスがとてもきれいで、合格した時は本当にうれしかったです。女子同士だからこそ分かり合えたり、高め合える場面も多々ありましたね。学業面はもちろん、みんなおしゃれで、がんばり屋さんが多かったので良い刺激をもらえました。
02大学時代、特に印象に残っていることはありますか。

何といっても社会福祉士の試験ですね。大学生活の集大成ともいえるものでしたが、実は私、全然勉強していなかったんです…。夏の模試でも合格基準に届かず、実習指導室の方から「1点でも上回れば合格、1点でも下回れば不合格よ。どちらがいいか考えてみて。落ちたらかなり後悔すると思うから」と言われて、そこから焦って奮起することができました。

03国家試験の勉強を通して大きく成長できたんですね。
そうなんです。それまでの私は何をしても中途半端というか、目標を達成することが苦手なタイプで、社会福祉士の試験もどこか諦め半分でした。でも「1点越えればいいんだ。あとちょっとがんばろう」と思えたんです。これはかなり大きなターニングポイントでした。初めて大きな夢が叶ったという達成感があり、勉強をすることに対しても前向きになれました。
04筑女大での出会いが人生の転機になったんですね。

筑紫女学園大学 (以下、筑女大)時代には本当にさまざまな人から支えていただきました。友人はもちろん、先生方も真面目な話から他愛もない話までたくさん付き合ってくれて、一見何でもない時間が今の私をつくってくれています。筑女大の校風でもあると思いますが、型にはめられることがなく、私のやりたいように伸び伸びさせてくれたのが本当にありがたかったです。

05卒業して感じる筑女大の良さはありますか。
いつも「興味があることは何?」「深めたいことを深めていいよ」と背中を押してくださいました。「これしなさい、あれやりなさい」と言われた記憶がないんです。でも決して放任主義ではなく、少人数で目が届く環境のおかげか「分からない時はいつでもサポートするよ」と見守ってもらえている安心感もありました。実際、社会に出ると、自分で問題を見つけて、どう解決すべきか考えて、行動していかなくてはいけないので、大学時代にその練習ができて良かったです。
06思い出の場所はどこでしたか。

九州国立博物館や太宰府天満宮など文化的な場所が身近にある町の空気が好きでした。時間が空いたら少し散策に出かけたり、友達と梅ヶ枝餅を食べたり。大学の図書館も居心地が良くてよく立ち寄っていました。空き時間に雑誌をめくったり、友人とけんかをしてしまった時に頭を冷やしたり、居場所といえば、図書館を思い出します。

07卒業後の進路について教えてください。
学生時代に実習先としてお世話になった社会福祉法人「柚の木福祉会」に就職しました。ここはどんな人でも生きやすい「屋根のない施設づくり」を目指していて、障害のある方々を過剰に擁護するわけでもなく、彼らがどうしたら生きがいを持って暮らせるかという姿勢で接するところに魅力を感じました。入ってすぐに、法人が運営する事業所のひとつである「ふれあいの部屋」の塾長を任されました。糟屋郡志免町の志免南小学校の中にある福祉の作業所で、小学1年生の教室の隣にあります。赴任して気付いた課題は、利用者さんも子どもたちもお互いの存在に気づいているけれど、どう接していいか分からないということでした。最初は私自身、右も左も分からず、まずは子どもたちからも利用者さんからも親しみを持ってもらえる“近所のお姉さん的存在”を目指しました。それから「彼らが一緒に楽しめる空間をつくりたい」と考え、音楽をかけて踊る時間を設けたんです。そしたら「楽しそう!」という空気が生まれ、少しずつみんなが挨拶を交わしたり、笑い合える時間が増えました。
08塾長としてどんなことを心掛けていましたか。

福祉って暗い印象を持たれがちですが、「明るいものなんだ」ということを伝えたい一心で、踊ってみたり、笑顔が花咲く空間をつくりました。だけど、そのことを関わる当人たちしか知らないんじゃもったいないですよね。「福祉はみんなに関係があって明るいものなんだ」という事実をいろんな人に知ってもらうにはどういう発信をしたらいいんだろうと考えました。それで「グッドデザイン賞」や、高齢者介護や障害者福祉などの現場で働く若手職員らを表彰する「社会福祉HERO’s」に応募しました。結果、2015年「ふれあいの部屋は無形のソーシャルデザイン」としてグッドデザイン賞未来づくりデザイン賞を受賞、2019年社会福祉HERO’sを受賞しました。数ある中から選んでいただけた時は本当に驚いて、私だけじゃなく、関わったみんなも喜んでくれました。そこから全国的にも注目していただき、たくさんの方が見学に来てくれました。人前で話したり、自分を表現したりするのが苦手だった利用者さんも少しずつ積極的な姿勢に変わっていきました。長年続いてきた「福祉=暗い」というイメージにとらわれることなく、果敢に取り組めば世界は良い方に変えていけるんだという経験は、利用者さんにとっても、私にとっても自信につながりました。

09藤田さんにとっても大きな転機になったんですね。
そうなんです。実は、この経験がきっかけとなって、今取り組んでいる「SDGs(エスディージーズ)」に出会い、転職しました。SDGsとは、2015年に国連で開かれたサミットにおいて世界のリーダーたちが定めた国際社会共通の目標で、17のゴールと169のターゲットから構成されています。以前は、福祉という世界の中でイメージを変えようと取り組んでいましたが、SDGsは、環境や世界平和、経済など幅広いアプローチから「誰一人取り残さない社会」を実現しようとしています。「福祉を明るく」という個人的な柱は変わりませんが、地域活性や環境など、さまざまな要素と福祉を絡めて良くしていきたいとも考えていたので、SDGsのことをもっと勉強するために今の勤め先であるissue+designに転職しました。
10藤田さんの今後の夢を聞かせてください。

SDGsは、人間一人一人が地球・社会のことを考えていかなくてはならない大きな目標です。ただ、一人で17ゴール全部を完璧にクリアするのは難しいことかもしれませんが、一人一人が考え、周囲の人とディスカッションを重ね、歩みを進めることでより良い未来づくりにつなげることができます。まだまだ日本では当たり前というレベルまでは浸透していないのが現状です。今の会社では、誰一人取り残さない持続可能な社会を完成させるにはどうしたらいいんだろうということを考える場をつくる活動をしています。正しい知識を伝えつつも、「決して難しいことではなく身近なことからできるんだよ」という啓蒙をしていくことが目下の目標です。

11最後に、母校や後輩にメッセージをお願いします。
記念すべき学園報100号、おめでとうございます。私は筑女大で「福祉はみんなの幸福」ということを教わり、それが今につながっています。友人や先生に恵まれ、夢につながる入り口に立てたことを感謝しています。今学んでいる後輩の皆さんも、個性を尊重して、しなやかに学べる校風の中で夢を見つけてください。遠くに見える夢でも1歩1歩進んでいけば、応援してくれる仲間や師が現れます。諦めずに自分を信じて突き進んでください。