- No.16
- 2025.03.26

自分が行動を起こさなければ、
何も始まらない。
チャレンジの先にいる
未来の自分に会いに行こう
Profile | 柴田 真生 さん 太宰府市 教育部 学校教育課 スクールソーシャルワーカー 筑紫女学園大学人間科学部|2019年卒業 |
大西 良 さん 筑紫女学園大学人間科学部 人間科学科 心理・社会福祉専攻 准教授 社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師 |
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01ゲストティーチャーとして筑女の後輩たちに指導する縁も
- 柴田:筑女を卒業してもう6年。あの頃は、実家がある糸島から往復4時間かけて通っていました。まさか、自分が卒業後も縁あって太宰府市や筑女に関わる仕事ができるなんて思ってもいませんでした。大西先生が声をかけてくださったから今の私があります。
大西:まだ柴田さんが就活生だった頃、ちょうど太宰府市からソーシャルワーカーの求人がきて「柴田さんが適任だ!」と、直感しました。勉強熱心だったし、人が話しているときにはしっかりと相手の方に体を向け、真剣に耳を傾ける姿が印象に残っていたんです。柴田さんなら間違いないと思っていましたが、ご活躍中の様子を聞くと本当にうれしいですね。
柴田:ありがとうございます。今は、社会福祉士、精神保健福祉士の資格を有し、太宰府市内の小学校と中学校を拠点に生徒と昼休みに1対1で話したり、家庭にお邪魔して保護者の話を聞いたりしています。最近はオンラインでの面談もあり、不登校や虐待の問題に対応することも多いです。どんな形であれ、人と向き合うことを大切に働いています。
大西:偶然、小学校の校長先生に話を聞いたところでしたよ。保護者からも生徒からも信頼が厚く、“引っ張りだこ”だ、と。
柴田:ありがたい限りです。
- 大西:柴田さんといえば忘れてはならないのが、太宰府市教育委員会と筑女大が連携して取り組んでいる「キャンパス・スマイル」の活動です。学校を休みがちな子どもたちの居場所を本学内につくり、学生たちに「スマイルサポーター」として活動してもらうもので、サポーターになる学生は養成講座を受講する必要があります。柴田さんにはその講座のゲストティーチャーとして来てもらいましたが、学生たちから非常に好評でした。
柴田:学生の皆さんとの触れ合いは、私にとっても勉強になることが多いんです。今の学生たちの考え方に気付きをもらうこともありますし、講義の資料を作る過程が自分の仕事を振り返るきっかけにもなっています。「ソーシャルワーカーになりたい」と思ってくれる学生さんが多いので、私自身「もっと良いお手本にならなければ」と、気が引き締まります。
02悩みを言葉にできない子がいても耳を傾け、伝え続ける努力を諦めない
- 大西:柴田さんは学生の頃からエネルギーに満ちていましたからね。今でもよく覚えているのは、柴田さんが卒業してから一緒に始めた警固公園の夜廻り活動です。柴田さんの声かけから始まって、小倉駅や久留米、飯塚にも行きましたよね。これほどまでにチャレンジ精神が旺盛で積極的な学生は、あまりいないんじゃないかと思います。
柴田:確か、私が仕事を始めたばかりの頃でしたね。夜廻りで出会う子は、学校のサポートがうまくいっていないケースが多いんです。だから、彼らと話す中で自分の仕事への向き合い方も変わり、私自身も本当に良い経験をさせていただきました。今の子どもたちを見ていると、大人を頼ることが難しい状況で、SOSを発信できない子が多い印象を受けます。本当は言いたいことがあるけど、うまく言葉にできずに悩みを抱えている子が増えているように感じます。大西先生は、どう思われますか。
大西:そうですね。自分の気持ちを整理したり、感情を言語化したりすることが苦手で、サポートにつながりにくいケースは増えているようですね。でも、意思を表明するのが苦手と感じている人は、大学生にも多いんです。実習から帰ってきた学生のほとんどが「自分の語彙力のなさや表現力の未熟さを痛感した」と言います。でも、慣れと経験で変えていくことができると思っています。
- 柴田:実習では、自分のことを全く知らない人に対して自分の考えを伝えないといけない場面が多いですもんね。私も、今のコミュニケーションスキルは実習で鍛えられたと思います。また、学生時代にさまざまな先生のおかげでホームレス支援や自主夜間中学のボランティアなど、多くの場所でたくさんの人と関わる経験ができたのも今に生きていると感じます。先生のおっしゃる通り、慣れと経験ですね。
大西:私は授業でよく「ソーシャルワーカーは、言葉にならない感情を言葉にするサポートをすることでもある」と伝えるんです。
柴田:覚えています。言葉が難しいなら、絵で表現してみたり、何か紙に書いてみたりしてもいいと思います。とにかく、こちら側が伝え続けないと相手には届かない。私たちが諦めたら止まってしまうんですよね。だから、子どもたちにも積極的に声をかけ、SOSが出せる環境をつくっていきたいと心がけています。
03筑女だからこそ出会えた仲間たち。切磋琢磨し合える環境に感謝
- 柴田:在学中は立ち止まって考えることができていなかったのですが、今にして思うと、太宰府という自然に囲まれた環境で学べた経験は、かけがえのないものだったと感じます。特に印象に残っているのは、国家試験です。
大西:懐かしい。30~40人くらいで、玄海に宿を借りて国家試験合宿もしましたよね。
柴田:先生方が用意してくださった過去問を、みんなで何度も解いて、時には先輩が試験に受かるための極意を話しに来てくださって、大変なはずなのに、当時の写真を見返すとみんな笑顔なんですよ。一つのチームになって、みんなで合格を目指そうという空気感を先生方がつくってくださったんだなと思います。
大西:コロナ禍をきっかけに合宿はなくなってしまいましたが、もちろん今でも国試前のサポート体制は変わっていません。筑女は決して大規模な学校ではないので、教員と学生との距離が近いんですよね。学生同士も近い。だから、切磋琢磨し合える関係性が生まれやすいのではないかと思います。
- 柴田:確かに、同級生とは今でも月1回のペースで会うくらい仲良しです。また、同級生の中には私とは違う視点の仕事をしている子もいるので、制度のことで困ったときにその分野で働く友人にくわしく教えてもらうこともあります。逆に、私が尋ねられることも。そういえば、働きはじめてすぐの頃、ゼミの高木先生に法律関係の件で相談したことがありました。
大西:柴田さんのように、卒業後もこうして大学のネットワークを活用してくれるのはうれしいですね。私も、子どもとの関わり方で分からなかったり、家庭での支援方法で悩んだりしたときには、柴田さんに相談しています。時には背中を押されることもあって、助けられていますよ。心強い存在です。
04一度きりの人生。「やりたい」と思ったら即行動!
大西:最後に、卒業生として在学生へのメッセージがあれば、ぜひ聞いてみたいです。
柴田:筑女は、仏教教育に触れる機会に恵まれています。人との縁を尊んだり、出会いに感謝したり、人を大切にする姿勢は、筑女で学びました。スクールソーシャルワーカーは人と深く関わるお仕事なので、こうした学びは非常にありがたかったと、今もしみじみ感じます。皆さんも、学べる環境があることに感謝を忘れず、日々いろいろなことに挑戦してください。人生は一度きり。会いたい人には会い、動きたいと思ったときには動くこと。自分が積極的に行動に起こさなければ、何も手に入りません。「やりたい!」と思ったら臆さず即行動してみてください。
大西:私は、縁のある学生に対して「数年後には同業者になる仲間だ」と思いながら、常に接しています。柴田さんのような仲間がこれからも増えていくと思うと、未来が楽しみで仕方ありません。今日はありがとうございます。