No.13
2023.10.01

興味のある分野を
とことん追い続ける姿勢は
筑女の環境が育んでくれた

Profile 坂口 翠 さん
FEEL GOOD Social Business Company 代表
筑紫女学園高等学校|2001年卒業
筑紫女学園大学 文学部 アジア文化学科|2006年卒業
01現在のお仕事を教えてください。
外資系のIT企業で働きながら、化粧品のアップサイクル事業「プラスコスメプロジェクト」を運営しています。具体的には化粧品メーカーや企業、個人から回収した廃棄予定のメイク用品をクレヨンや画材に生まれ変わらせる活動です。
きっかけは、大学卒業後に入社した化粧品メーカーでたくさんの化粧品の廃棄を目にしたことでした。私自身、コスメのテスターやサンプルの処理に悩んでいたこともありますが、何より環境の観点から見て、この状況を課題だと感じずにはいられなかったのです。そこで会社を退職し、九州大学大学院に社会人大学院生として入学。環境問題や化粧品の歴史、化粧品パッケージデザイン、ソーシャルビジネス活動の仕方などを学び、在学中の2012年に「プラスコスメプロジェクト」を立ち上げ、2021年に法人化しました。
02筑女での学びで、最も印象に残っていることはありますか。

筑女の魅力の一つは、やはり仏教教育が受けられること。高校・大学という若いタイミングで仏様の御教えに触れられたのは、自分にとって非常に大きな経験だったと思っています。
また、大学では、国籍や民族の異なる人々が互いの文化の違いを認め合い、対等な関係を築こうとしながら共に生きていく“マルチカルチャー”を学んだことがかけがえのない財産となっています。アジア諸国では仏教が根付いている国が多いため、高校・大学と筑女で学んだ内容は、まさに文化の相互理解につながることだったと改めて感じます。また、宗教だけではなく、音楽や建築、食など、相手のあらゆる文化をリスペクトする姿勢もここで学びました。国際結婚をしてカナダ在住の際は、多文化を尊重するという点で、筑女での学びがとても役立ちました。

03筑女時代、特に印象に残っていることはありますか。

高校はクラス数も生徒数も多く、本当にたくさんの刺激を日々受けていました。今の事業を始める一歩が踏み出せたのも、そうした環境下で成長できたからではないかと思います。校訓である「自立・和平・感恩」は人生のベースになっています。
また、大学時代は友人とあらゆるアジア諸国やヨーロッパなどを訪れましたが、そのたびに英語力が足りないことを痛感しました。ディスカッションや交渉が必要な場では特に苦労をし、社会に出る前に英語力を上達させたいと思い、在学中にカナダへの留学を1年間経験。ここでさまざまな世界や考え方に触れることができました。

04当時、関わりの深かった先生についてお聞かせください。
高校生の頃は、受験生になった時に自身でも気づかないストレスがあったのか、保健室に行って先生に話を聞いてもらうことがよくありました。特にこれといって大きな出来事がなくても、その日あったことを先生に話すだけでとても穏やかな気持ちになれたんです。
また、世界観を楽しめるように教えてくださった日本史や漢文の授業も、記憶に残っています。大学進学後に海外に行く機会が増え、そのたびに自国の歴史やアジアの文化について知識を持つ大切さをひしひしと感じました。
05卒業して感じる筑女の魅力はありますか。

法話や仏教讃歌は、正直に言うと当時は理解できない部分もありました。でも、人生で大変なことが起きたり辛い出来事に直面したりしても心は常に平穏を保てるのは、仏教教育を受けたからではないかと思っています。あの頃学んだものが、心の拠り所のような存在になっているんですよね。
それから、筑女で学ぶ女性たちはみんなアクティブでフットワークが軽いところも魅力だと思います。私の同級生にもグローバルに活躍している女性もいたり、コミュニティ形成に貢献したり、みんなそれぞれ個性豊かで尊敬できる人ばかりです。現在、息子を育てていますが、もしも娘がいたら絶対に筑女に入学して学んでほしいと思います。

06今後の目標を教えてください。
今後はメイク用品をクレヨン絵の具画材にするだけではなく、使われなくなったパッケージを知育おもちゃや雑貨にするなど、無駄にするところのない循環型のアップサイクルにも挑戦していきたいです。現状、日本では、製品の持つ特徴を生かしつつ、新たな価値を与えて生まれ変わらせる「アップサイクル」という考え方自体が、まだあまり浸透していません。今の子どもたちが大人になる頃には、これが当たり前の文化として根付くよう、これからも活動を続けていきたいと強く思っています。
また、現在、クレヨンを製作しているスタッフは私を含めて3人で行なっています。自宅でもできる仕事で子育て中の方もそうでなくても、空き時間がある方は挑戦しやすいと思うので、一緒に製作できる仲間をもっと増やすことも目標です。メンバーが増えたら、SDGsを伝える環境型ワークショップを開催するなど「プラスコスメプロジェクト」を広げていく活動にも力を入れたいと考えています。
07後輩の皆さんにメッセージをお願いします。

私は高校・大学時代に好きなことに熱中できたから、見えた景色や出会いがあったと思っています。何より、そんな私を心から応援してくれる環境が筑女にあったから、ここまでくることができました。学生時代に出会った「好き」や「興味」は、大人になっても続いていくものだと思います。ぜひ、皆さんもそんなものに巡り合えたら、迷わず追い続けてください。応援しています!

08筑女にもメッセージをお願いします。
私の頃と変わらない古き良き校風や教育はそのまま保ち続けて、歴史ある筑女がこれからも変わらず世代を超えてあり続けること願っています。また、たくさんの先輩方が卒業生として活躍しているので、これからも素晴らしい人材を輩出していってほしいです。楽しみにしています。