今月のことば

2020年のことば

2020.09

やなたかしさんは、言わずと知れた「アンパンマン」の作者です。

やなせさんは、太平洋戦争に自分も出征しますが、この戦争で弟を亡くします。弟さんは大変優秀な方であったため、やなせさんは「なぜ自分が死なないで、優秀な弟が亡くならなければならなかったのか」「戦争とは簡単に大切な人の‘いのち’を奪うもので、決して正義ではないのだ」と考えられました。「アンパンマン」は、その時の体験や深く心に刻まれた想いからうまれたものなのです。

 「アンパンマン」は最初、「顔をちぎって人に食べさせるなんて、そんなグロテスクな漫画は子どもの教育に悪い」ということで、クレームがすごかったそうです。しかし徐々に人気になり、今のような子ども達のヒーローになりました。

アンパンマンは困っている人や、悲しんでいる人に寄り添い、自分の身をけずって(顔のパンの一部を分け与えて)助けようとします。仏教の慈悲のこころは「人の喜びを自分の喜びとし、人の悲しみを自分の悲しみとするこころ」です。そしてその中でも、自分を犠牲にして他を助けようとするこころは、一番難しいことですが、一番尊い行いではないでしょうか。インドのマザーテレサや日本の中村哲さんはそのような行いを実践された人でしょう。

 戦争は、いつの時代も、自分を正義とし、敵対する集団を悪として非難し、やっつけようとします。いじめや様々な差別も構図は同じです。やなせさんは「それは本当の正義ではない」と言われているのです。

 何のために生まれて 何をして生きるのか 

   答えられないなんて そんなのはいやだ

 何がきみの幸せ 何をして喜ぶ わからないまま終わる 

   そんなのはいやだ

 「アンパンマンマーチ」の歌詞にあります。この歌詞には、やなせさんからの

メッセージがこめられています。本当の正義とは何か、人間として大切な生き方とは何か、を考えてみたいものです。

                              文責 宗教科