今月のことば

2016年のことば

2016.09

 曹洞宗を開いた道元禅師の言葉です。仏教では、重要な布施(与えること)の一つである「無財の七施」の最初に「和顔愛語(わげんあいご)」があげられますが、愛情を持った言葉は、人に大きな喜びや生きる力を与えるものです。道元は、

むかひて愛語をきくは、おもてをよろこばしめ、こゝろをたのしくす。むかはずして愛語をきくは、肝(きも)に銘(めい)じ、魂に銘ず。しるべし、愛語は愛心よりおこる、愛心は慈心を種子とせり。愛語よく廻天のちからあることを学すべきなり(直接愛のある言葉を聞くと、顔に喜びが表れ心は楽しくなるし、間接的に人づてなどで愛のある言葉を聞くと、肝に銘じ魂に深く刻まれるものです。愛語は愛の心より起こり、愛の心は慈悲の心がそのおおもとになっています。愛語には天地がひっくり返るような感動を与える力があることを知ってください。)

と言っています。愛の心や言葉には、大きな力があることを教えるものだと思います。

 1982年の4月27日、本校にマザー・テレサが来校されました。マザー・テレサはインドのコルカタで貧しい人々のために働き、「死を待つ人の家」や多くの「孤児院」などを開設しました。たった一人で始まった活動は多くの人々を動かし、彼女が設立した「神の愛の宣教者会」は世界中に広がり、マザーの亡き現在も多くの活動をしています。彼女の行動や言葉が全世界の人々に、生きる力や感動をもたらしたことは周知のとおりです。

 本校では、およそ2000人の生徒の前で愛の大切さや尊さを伝えられましたが、そのスピーチは生徒たちにおおきな感動を与えました。

 本校を訪問されたおよそ1ヶ月後の6月6日、イスラエル軍がレバノンに武力侵攻しました。レバノンの首都ベイルートでは、連日絶え間なく砲弾が飛び交う状態でした。ベイルートにはマザーが建てた児童養護施設があり、そこに40人の子供たちが逃げられずに取り残されていました。マザーは砲弾が飛び交うベイルートに行き、周囲の制止を振り切って救出に向かいました。ドキュメンタリーの映像を見ると、マザーが救出に出たとき、それまで鳴りやまなかった砲声がピタリと止まります。マザーの行動を知った双方の軍隊が、一時的に停戦したのでしょう。40人の子供たちは赤十字の車で、無事救出されます。

 上記の道元禅師の言葉の直前には、

怨敵(おんてき)を降伏(こうぶく)し、君子を和睦(わぼく)ならしむること愛語を根本とするなり(怨みあいをやめさせ、争いをおさめることの根本には愛語がある)”

とありますが、一時的にせよ、レバノンで争いが止まった背景には、マザーの愛の心と言葉があったからではないでしょうか。

 

(文責:宗教科)

※ 『CJ手帳』には「廻天」を「回転」と誤って表記しました。訂正をお願いします。申し訳ありませんでした。