今月のことば

2016年のことば

2016.10

 仏教では人間の煩悩の数は108あると教えます。(除夜の鐘の数ですね。)

 その中でも特に三毒の煩悩といって、1.むさぼること 2.怒ること 3.智慧にくらいこと があげられています。また、自分を上位において、他者を見下すことの煩悩を「慢(まん)」といいます。自慢や我慢もここから出た言葉です。我慢は本来、自分を思い上がる煩悩のことを指す言葉です。それが自分の心から出てきたときに「がまんだ、がまんだ」と自分自身に言い聞かせたことから、現在の「我慢する」という意味に転じたのです。

 さて、「おごり」とは自分と他者を比較し、自分の方が勝っている、優れているという思いが働いている状態をいいます。誰でもこのような思いを持つことがあるでしょう。しかしながらこの思いは、他者を批判し、さげすみ、差別していくことに容易につながっていきます。「いじめ」の原因もここにあるのではないでしょうか。人と人とが、いがみ合い、争いの原因となるのが「おごり」です。

 7月の末に、障害を持たれた方々の施設で19人の方が尊いいのちを亡くされるという事件がありました。犯人は障害をもった方々を勝手に「役に立たない」と決めつけ、殺害したそうです。「役に立つか」「役に立たないか」のものさしで人間の価値を決めるのは「おごり」です。間違ったものさしです。

 現在、世界中のいたるところで紛争や、もめごと、その種となるようなにらみ合いがあっています。この原因は、お互いが、私が「正義」であなたが「悪」だと決めつけ、相手を懲らしめることの理由にしているから起こるのでしょう。これも「おごり」です。自分勝手なものさしで決めつけてしまうことで争いは起きてしまいます。歴史的に見ても、これまであった数々の戦争や紛争、差別の原因がこの「おごり」のものさしから始まったといえます。

 仏教では「無分別智(むふんべっち)」という教えがあります。自分勝手なものさしで物事をはかって、決めつけてはいけないということです。また「正見(しょうけん)」によって、常に正しい教えや、真理からものを見るように説いています。なかなか難しいことかもしれませんが、せめて相手の身になって考えたり、相手の意見をしっかり聞いたりするところから始めてみてはどうでしょうか。そうすることでお互いが納得したり、わかり合えたりすると思います。

 

(文責:宗教科)