今月のことば

2019年のことば

2019.06

  今月のことばは、住井すゑさんの「文化というのは、簡単に言えば、いのちを大切にすることです」という言葉です。

  文化という言葉を日本国語大辞典で調べてみると、『自然に対して、学問・芸術・道徳・宗教など、人間の精神の働きによって作り出され、人間生活を高めてゆく上での新しい価値を生み出してゆくもの(一部抜粋)』とあります。なぜ、それが「いのちを大切にする」ことになるのでしょうか。

  住井すゑさんは、奈良県の小説家です。幼い頃に被差別部落の草履商(ぞうりしょう)から度々訪問販売を受けたことが部落差別について知るきっかけとなりました。周りの大人達が行う部落差別が次第に耐えられない苦しみとなり、やがて、「なぜ、生まれながらに貴い、卑しいがあるのか」という「人間の平等」を探求するようになり、ついには代表作『橋のない川』で、被差別部落の人々の暮らしと心情を細やかに描きました。

  住井さんは、「水平社宣言」に対して、「『水平社宣言』は日本で最初の人権宣言といわれ、『人間は尊敬すべきものだ』という人間の本質を謳(うた)っています。『人の世に熱あれ、人間に光あれ』の文で締(し)めくくられるこの宣言こそ人権の夜明けであり、世界に誇りうる私たちの文化財だ」ともいわれています。 

  私たちは無数の“いのち”とのつながりの中で生活をおくっています。つながりの中で生活をおくる自覚を持つからこそ“いのち”1つひとつを大切にしていきます。“いのち”1つひとつを大切にしていくことで、他を思いやる心が生まれ、それが心の安らぎを生み、イキイキとした、活気に満ちた生活をおくることが出来ます。そのイキイキとした生活から文化が生じていくのです。つまり、文化とは“いのち”を大切にしていくことなのです。

  私たちは、生まれた場所・時間、好きなもの、嫌いなもの等、1人ひとり違います。しかし、与えられたいのちの尊さに違いはありません。その尊い“いのち”に支えられながら生かされている私たちだからこそ、お互いを尊重し、大切にしていかなければならないのです。そしてお互いを尊重しあう心があって初めて文化と呼ぶことが出来るのです。   

                       (文責:宗教科)