今月のことば

2019年のことば

2019.5

   5月、「さわやかな風かおる季節」です。暖かさが増し、新緑の木々や虫たちのいのちの息吹を感じる時節になりました。

   今月の聖句は、あるお寺の掲示板に書かれていたものです。ジャンケンをたとえにした、わかりやすい言葉ですが、なかなかに深い意味があると感じて選びました。

   相手に、よりダメージを与えるために、力を込めて拳を握ってグーで殴ります。時には激しい言葉を伴いながら、その時の殴る方の顔は、鬼のように恐ろしい形相をしていることでしょう。心の中もきっと、怒りや嫉妬の炎で埋め尽くされているのだと思います。逆にパーで頭を撫でるときは、やさしくふんわりと、いたわりのこもった言葉を伴って、笑顔で撫でることでしょう。心の中も穏やかで、相手を思いやる慈悲の心に満ちているのでしょう。

さらにそのパーの手とパーの手が合わさって合掌の姿勢になるのです。日本では仏様を礼拝する時に合掌をしたり、「いただきます」の時に合掌しますが、敬いの気持ちや、感謝の気持ちを表す姿勢です。お釈迦様(釈尊)のお生まれになったインドでは、その合掌の姿勢で「ナマステ」と言います。右手が清らかな手、左手が汚い手と考えられていますが、その清浄と不浄のどちらをも持ち合わせた、「私」全体で「あなたを敬います。あなたを信用します。」ということです。

   さて、今の世の中を眺めてみると、自分の利益のため、また自分の怒りにまかせて、他者や子ども、あるいは仲間を傷つけたり、だましたりということが毎日のように起きています。それは「グー」の世界です。しかしながらまた、他者の苦しみに寄り添って災害復興のためのボランティア活動をしたり、毎朝子ども達の通学のための交通安全見守り活動をしている人もいます。それは「パー」の世界です。  

   仏教では「すべての生きとし生けるものはつながっている」と縁起の教えを説いています。確かに衣食住どれをとっても私ひとりで手に入れたものはありません。だとすれば、恩を返し、恩を送っていくためにも、「パー」の世界、「合掌」の世界を、私からみんなに広げて行こうとすることが大切な生き方ではないでしょうか。

                              文責 宗教科